2021/12 ①人口減少時代に備え、島本にしかない魅力を高めておこう②高層マンション建設による一時的かつ急激な人口増は長い目で見たときに人口維持につながるのか
- みどり 中田
- 2021年12月28日
- 読了時間: 29分
更新日:1月20日
中田議員
2021年12月定例会議、一般質問を行います。
「人口減少時代に備え、島本にしかない魅力を高めておこう」です。
国立社会保障・人口問題研究所の報告によれば、日本の21世紀末の総人口は6,000万人と推計されています。2021年の人口は約1億2,500万人なので、これから80年で人口か半減するということです。この変化は類を見ない、極めて急激な減少と言われています。
島本町の人口推計は、40年後の2060年まで人口予測していますが、そこでも2025年をピークに人口が減り始め、40年後には、高く見積もっても約2万5,000人になるとしています。これは、1980年頃の島本の人口に相当します。長い目で町の将来を考えたとき、確実に訪れる人口減少時代に町がどのように対応していくかは、極めて重要です。長期的な予測を立て、今、できることから着手をすることが、未来世代に対する私たちの責任ではないでしょうか。そこで、島本町の人口問題に対しての取組を伺います。
人口問題に対処するには、減少スピードを少しでも緩やかにすることが必要で、そのためには社会減を小さくすることが重要です。人口が減った社会において、島本町は、近隣の町と居住者をめぐって否応なく競争関係に陥るでしょう。そのときに大事なのは、この町にしかない魅力を島本町が持つことです。近隣自治体と比較して、本町が優位な点は何であると考えますか。市民アンケート等から見えるこの町の魅力について、伺います。
総合政策部長
それでは、中田議員の一般質問に、順次御答弁申し上げます。
まず、「人口減少時代に備え、島本にしかない魅力を高めておこう」についてでございます。
平成30年に実施した第五次総合計画策定に係る住民アンケート調査では、島本町の様々な資源や特性などにおける「よいところや魅力」についての設問で、「そう思う」または「どちらかと言えばそう思う」と答えた方の合計割合は、「自然が豊か」「水がおいしい」「治安が良い」「交通の便が良い」「通勤・通学に便利」の5項目で8割を超え、高くなっております。また、同時期に実施した中学生へのアンケート調査では、普段の暮らしで感じていることについて、「そう思う」または「どちらかと言えばそう思う」と答えた方の合計割合は、「自然が豊か」「水がおいしい」「まちのイメージがよい」「治安がよい」「街並みや景色が美しい」の5項目で8割を超えており、いずれの調査においても、「自然が豊か」「水がおいしい」が上位でございました。
なお、近隣自治体との比較につきましては、各自治体において総合計画等を策定する際に住民アンケートを実施されておりますが、設問の趣旨が各自治体で異なることから、一概に比較できませんが、本町の魅力として、自然の豊かさや水、治安の良さ、交通の利便性が、特徴的な魅力になっていると認識いたしております。
以上でございます。
中田議員
島本の魅力は、「自然が豊か」「水がおいしい」であるとのことです。近隣自治体の市民アンケートとは比較できないとのことでしたが、参考にお伝えすると、茨木、吹田、摂津、高槻のアンケートで「居住地の魅力をどこに感じているか」に相当する質問では、上位に自然環境が入っているところはありませんでした。つまり、本町独自の魅力は「自然が豊か」という点にあると言えると思います。
では、約1年前に無作為抽出で取った都市計画マスタープランのアンケートではどうだったでしょうか。都市計画マスタープランアンケートから見た島本町の魅力について、伺います。
都市創造部長
「都市計画マスタープランのアンケート結果から見た島本町の魅力」に係る御質問でございます。
当該アンケートにつきましては、令和2年度に、町内にお住まいの16歳以上の方から無作為に3,000人を抽出し、約半数の方から回答がございました。御指摘の本町の魅力について、直接的にお聞きした質問はございませんが、例えば、本町の現状に対する満足度につきましては、「自然環境の豊かさ」や「通勤通学の便利さ」「総合的な住みやすさ」などの項目に対し、高い評価が得られたところでございます。
以上でございます。
中田議員
このアンケートからも、「自然が豊か」というところを住民が魅力と感じているということがうかがわれます。
さて、これらのアンケートから、交通の便のよさも本町のもう一つの魅力であると言えるでしょう。しかし、人口減少対策を検討するときに、この点については注意が必要です。確かに本町は、京都、大阪まで20分と便利な位置にあるように思えます。しかし、高槻、茨木はどうでしょう。大阪中心部に、より短時間で着くことができます。また、長岡京や向日市は京都市により近い位置にあります。
本町の交通の便のよさは、近隣自治体と比較して優位にあるのではないということです。つまり、この魅力は将来の社会減を減らすための武器にはならないのです。このことから、本町がこれから打ち出していくべき独自の魅力は、「自然の豊かさ」にあるのだと言えます。
そこで、本町の「自然の豊かさ」について、伺います。その魅力を作るために、現状、どういう施策をされていますか。
総合政策部長
「自然の豊かさ」について、「その魅力を作るために、現状、どういう施策をしているか」についてでございます。
第五次総合計画の第6章「魅力と活力、にぎわいのあるまちづくり」にもありますとおり、「都市農業・林業の振興」を掲げており、具体的には、多様な担い手による営農環境の整備や、生産緑地地区の指定、ファミリー農園などによる農とのふれあいなどを推進するとともに、森林保全の取組につきましては、大阪府、企業、ボランティアとの連携による整備を進めているところでございます。
以上でございます。
中田議員
本町における自然の豊かさにおいては、森林だけではなく、都市農地が重要な役割を果たしていると行政が認識しているということが、今の答弁からよく分かりました。ここ数年は、都市農業振興のため積極的な取組をされていることはよく理解していますし、大変評価しているところでもあります。また、企業と連携した森林保全活動を進めるなど、森林整備に取り組んでいることもよいことです。しかし、そうであったとしても、現状、「自然の豊かさの魅力を伸ばす」というところまでにはなっていないのが現状ではないでしょうか。
そこで、もっと自然の豊かさを延ばす施策をすべきとの観点から質問です。
例えば、島本町では第1次産業従事者比率に対して、農林水産業費の歳出に占める割合は、近隣自治体と比較して平均程度の値でしかありません。これては、他自治体と比べて都市農業や森林整備により力を入れているとは言いにくいと思います。言い換えると、この点で他自治体との差別化を図るには、まだ弱いということです。
人口減少時代に備え、今後はもっと自然の豊かさを引き出す施策に軸足を置き、予算を優先的に投じるべきと考えますが、どうですか。町長に伺います。
山田町長 「自然の豊かさを引き出す施策に軸足を置くべき」とのお尋ねでございますけれども、先ほど総合政策部長が御答弁をさせていただいた都市農業の推進や森林保全の取組を着実に推進することを基本として、その取組自体が、さらなるまちの魅力につながる工夫が必要であると考えております。ファミリー農園など、農と触れ合う機会が身近にあるということをどうPRし、本町の魅力として生かしていくかについて考えていく必要があると感じております。
また、農林業の分野については非常に専門的な分野でもありますので、職員の育成やノウハウの蓄積などが必要であると感じており、全体のバランスを考慮しつつも、農林業の分野における人材育成にも努めていく必要があるものと考えております。
以上でございます。
中田議員
都市近郊にありながら、日常的に農と触れ合う機会があるのは、島本の強みです。昨今、リタイア世代だけでなく、若い世代でも家庭菜園ニーズが急速に高まっています。この波に、ぜひ乗っていただきたいです。さらなる工夫が必要であるとの認識があるのであれば、これまで以上に予算をかけ、マンパワーも投じていただきたいです。
ともあれ、都市農業や森林保全がまちの魅力になるような工夫が必要だという御認識であるというのは、心強い限りです。しかし、ここで現状について考えてみると、これらの魅力が年々減じられて来ているとも感じます。なぜでしょうか。
1つの可能性は、人口増と自然の豊かさが感じられる環境は、トレードオフの関係にあるということです。そこで、この観点から質問です。
高層マンションや集合住宅の開発が相次ぎ、町政施行以来最大人口を更新している島本町です。一方で、自然の豊かさが実感できるまちとしてはどうでしょう。高層マンションにより山並み景観が遮られる場所が増えました。市街地に残る農地は次々に住宅に替わっています。開発に伴い、農業用水路に蓋がされ、水の豊かさが感じられる場所も減りました。利用者増に伴う歩道整備のために、街路樹がなくなってしまった場所もあります。ケリやカエル、カメ、ドジョウなど、身近な生き物たちと触れ合うことができていた場は大幅に減少し、準絶滅危惧種のヒメボタルがわずかに残っていた生息地も、島本駅西側開発によって失われています。
10年前に転入してきた私ですら、年々、この町の自然の豊かさが失われ、その魅力が減じられていると感じます。昨年行われた都市計画マスタープランのアンケートでも、そのような意見が頻繁に見られます。
町長に問います。身近に自然の豊かさが感じられる環境が年々減少しているという実感はありますか。人口増と自然の豊かさがトレードオフの関係にあることは否めないのでしょうか。
山田町長
近年、町域内にできた集合住宅は、その大半が企業用地の跡地に建設をされたものであるものの、市街地における農地等については、農業の担い手等の問題や住宅需要等の状況から、年々減少傾向にあるという認識は持っております。また、私が子供の頃は、もっぱら若山台周辺の緑地であったり、若山神社から尺代にかけての山の中で遊んでおりましたけれども、こうした環境は現在も残っており、本町の魅力の一つになっているものと感じております。
また、先日ですけれども、高齢者団体の方々と意見交換をさせていただいた際には、「安全のために、もう少し水路に蓋をしてほしい」という御意見などもあり、町域内の道路には狭隘な箇所等もあることから、歩道の整備等についても多くの御要望をいただいているところでございます。
このため、私といたしましては、生物と触れ合うことができる環境保全の必要性についても理解をいたしておりますけれども、一方で、住民の皆様の安全な生活環境を確保するための取組は今後も必要と考えており、そうした際には、できるだけ周辺環境や景観との調和に配慮しながら取り組む必要があるものと考えております。
また、人口増と自然の豊かさが感じられる環境はトレードオフの関係にあるのではないかとのお尋ねでございますけれども、人口増加と自然の豊かさについては、必ずしも相反するものではないと考えておりますが、議員御指摘の住宅開発による農地の減少や高層マンション建設による景観の悪化など、人口増加と自然環境とは相反する側面があることも認識はしております。
今後におきましても、豊かな自然を残しながらも、人口減少社会に対応したバランスの取れたまちづくりを目指してまいりたいと考えております。
以上でございます。
中田議員
必ずしも相反するものではないが、相反する側面があるということですね。確かに、一般論としては相反しないことがあるかも知れません。ですが、島本町の現状を見たときには相反していると言わざるを得ないという御答弁であるように理解しました。
「人口減少社会に対応したバランスの取れたまちづくり」と言われていますが、そのことは、農地を宅地に替えるなどの市街地の拡大ではなく、既存住宅地の新陳代謝でしか達成できないと私は考えます。それができていない島本町の現状は、バランスを失いつつあると言えると思います。そして、町は全体として、個別にはされていますが、全体として、この現状をなすすべもなく放置しているだけではないでしょうか。
都市近郊で、交通の便のよい立地にありながら、豊かな自然環境を維持することと人口減少を食い止めることの間には、私は因果関係があると思います。「自然が豊かなまち」にしておけば、人口減少のスピードを緩やかにすることができるのではないでしょうか。この点についてはどう思われますか。町長に伺います。
山田町長 自然環境を維持することと人口動態との因果関係については、現状、明らかではないものと認識をしておりますが、アンケート調査にもありますとおり、豊かな自然があることが本町の魅力であると感じている住民の方が多くいらっしゃるということを考えますと、自然環境を維持していくことも重要な施策の一つであると考えております。
以上でございます。
中田議員
もう1点、付け加えたい点があります。先ほど、自然の豊かさを引き出す施策について、農地と森林をあげていただきましたが、生物多様性という観点も、自然の豊かさを構成する要素として、非常に重要だということを付け加えさせてください。多種多様な動植物がいる環境があってこそ、豊かな自然と言えます。また、近年では、生物多様性は私たちの健康によい影響を与えるという科学的な知見も出てきています。
例えば、ドイツの論文では、身近にいる鳥の種類が多いほど、私たちのメンタルヘルスによい影響があるということが分かってきています。数ではなく、種類が多いということが重要だということです。カラスや鳩など一部の生き物がたくさんいればいいというものではないようです。
島本町の生物多様性について、個人的な思いを話させていただきますと、例えば大雨の後、住宅地の水路にオオサンショウウオが流れてきたというニュースを聞いたときは、なんて素晴らしいまちなんだろうと思ったものです。また、家の前の水路で、当時小学生だった息子と大きなカワムツを捕まえたときも、住宅地にいながら、なんで、こんな経験ができることに感動しました。ですが、今はこの2ヵ所とも水路の上に蓋がされ、生き物と触れ合える場所ではなくなっています。本当に残念です。
また、夏の夜には、歩いてゲンジボタルが飛び交う様子を見に行くこともできます。自宅にいながら、様々なカエルの声を聞くこともできます。田んぼのアマガエルやヌマガエルだけではなく、「清流の歌姫」とも言われるカジカガエルの声が風に乗って水無瀬川から聞こえてくるのです。息子たちが小学生の頃は、飼育ケースとタモを持って水無瀬川に行き、たくさんの種類の魚を捕まえていました。言い出せばキリがありません。
この町に長く住まれている方からすると、それでも生き物の数が随分減ったということですが、都市近郊の住宅地にありながら多様な生き物たちを身近に感じられる環境は、私たちの生活を豊かなものにしてくれていると実感していますし、町外の友人が訪れたときには、市街地に残る農地とともに、うらやましがられるポイントでもあります。こういった生き物の豊かさを維持するためには、農地や森林に加え、市街地の中に街路樹や草地、樹林地、水路など、緑ある環境が点在し、孤立せず、緩く広がっている状態があることが重要です。
繰り返しますが、住宅地にあって、ホタルや野鳥が見られる、魚が捕れる、カエルの鳴き声が聞こえる、虫捕りができる、生き物と身近に触れ合うことができる。これは島本の自然環境の豊かさの根幹をなすものです。そして、こういった環境は私たちの生活の質を向上させます。社会減を小さくする試みは、今、町に住んでいる住民の幸福にもつながるのです。
そこで質問です。生き物の生息場所を積極的に創出するという観点も、豊かな自然環境の魅力創出に重要な要素と考えますが、いかがですか。町長に問います。
山田町長 本町が定めております生物多様性保全創出ガイドラインにおきましては、「本町には、樹林地や農地、草地、水辺といった多様な自然環境が存在し、豊かな生物多様性を維持している。それらを未来の世代に残していくために、住民、事業者、行政機関などと協力することなどにより、生物多様性に配慮していくことが必要である。」としております。
また、同ガイドラインには、「社会経済活動と生物多様性の保全創出は複雑な関係にあり、一概に社会経済活動を否定するものではないもの」としており、本町といたしましては、環境・社会・経済が、統合的に向上した持続可能な地域づくりを行っていく必要があるものと認識をいたしております。
以上でございます。
中田議員
今の御答弁だと、生物多様性保全創出ガイドラインのほとんど中身だったので、もう一度、改めて伺います。どのようにお考えか、生物多様性が自然環境の豊かな本町の魅力創出にも重要な要素である点、どのようにお考えか、改めて町長に伺います。
山田町長 自然環境の豊かさは、本町の魅力の一つであるとともに、SDGsの目標においても生物多様性保全に関する取組が掲げられておりますけれども、先ほど御答弁申し上げましたように、これらの推進にあたりましては、社会経済活動とのバランスを図る必要があり、環境・社会・経済が統合してはじめて、持続可能な地域づくりが実現できるものと考えております。
そのため、私といたしましても、今後とも住民や事業者の皆様、あらゆる方々に、本町における自然環境の保全に、御理解をいただけるように努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
中田議員
ぜひ、よろしくお願いします。
こういった市街地の生物多様性を支えるのは、農地に加え街路樹や草地、樹林地、水路など、緑ある環境です。これらは開発に伴い急速に減っており、生き物がにぎわう環境が損なわれ続けているのが現状です。森林と農地だけでなく、都市緑地や水路、樹林地、これらの保全も、まちの魅力を伸ばすために最優先にやっていただきたいです。相次ぐ住宅開発で人口が増えている一方で、それと引換えに、本町の魅力である自然豊かな環境が急速に失われています。まずは、これを認識していただきたいです。
近隣自治体と比較して本町が優位な点は、自然豊かな環境が享受できるという点です。その本町の魅力が、気がつけばなくなっていたということにならないようにしていただきたい。これが本質問の趣旨です。既に、大きく自然環境の豊かさが失われるという方向にバランスが崩れていると感じます。意識的に、市街地の自然豊かな環境を維持創出するために、人材配置、予算措置をお願いいたします。
2つ目の質問に移ります。
「高層マンション建設による一時的かつ急激な人口増は長い目で見たときに人口維持につながるのか」です。
本町は、マンション建設ラッシュの最中にあります。新たな高層マンションが建つことのメリット・デメリットについて、行政はどのように考えているか、伺います。
総合政策部長
続きまして、「高層マンション建設による一時的かつ急激な人口増は長い目で見たときに人口維持につながるのか」についてでございます。
第五次総合計画策定時の人口推計では、推計時点で想定される住宅開発を加味して将来人口の推計を行った結果、2040年においても人口約3万人を維持できる見込みとなりました。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2040年には約2万5,400人まで減少する見込みとなっており、この結果からも、現在の住宅開発が将来的な人口規模の維持に寄与することが明らかとなったところです。
一方、高層マンションの建設による課題といたしましては、景観に与える影響とともに、特定の地域における急激な人口増加に伴い、インフラ整備が追いつかないといったことが想定されます。
いずれにいたしましても、高層マンションの建設につきましては、メリット・デメリットの両面があるものと認識しておりますが、それらを考慮しながら、バランスの取れたまちづくりに努めていくことが必要であると考えております。
以上でございます。
中田議員
高層マンションが建つことのメリットとして、住宅開発が将来的な人口規模の維持に寄与するという御答弁でしたが、それはどういう意味でしょうか。もう少し詳しく伺っていきます。
人口推計において、国立社会保障・人口問題研究所、以降「社人研」と言いますが、この推計と比較して、住宅開発が将来的な人口規模に維持に寄与していると解釈されていますが、社人研と町が行った推計とで、シミュレーションの前提となる数値に違いはないのですか。住宅開発による人口増以外に、移動率など、同じ数値を用いているのか、伺います。
総合政策部長
まず、「住宅開発を加味した推計が人口維持に寄与しているか」との御質問につきましては、先ほど、「2040年においても人口約3万人を維持できる見込み」と御答弁させていただいたとおりでございます。国立社会保障・人口問題研究所と町の推計との人口の差は、令和2年時点では1,900人弱ですが、令和22年(2040年)には、両社の差は4,000人から4,800人弱まで広がる推計となっております。
いずれにいたしましても、我が国においては人口減少が避けられない状況となっている中、自治体として今後も一定の人口規模を確保し、将来にわたり、地域社会の活力を維持していくことは必要なことであると認識しております。
次に、「シミュレーションの前提となる数値の違い」でございます。
推計方法は、いずれもコーホート要因法を用いておりますが、国立社会保障・人口問題研究所の推計は、国勢調査人口を基礎にした平成30年度の推計であるのに対し、本町の推計は住民基本台帳人口を基礎にした令和元年度の推計となっております。また、町の推計で住宅開発を加味するにあたりましては、町内移動率30%と仮定しております。
以上でございます。
中田議員
今のお答えですと、社人研と町の推計の人口予測にどういった違いがあるのか、分かりません。国勢調査と住民基本台帳の間には、それほど大きな数字上の違いはないと考えられるからです。
そこで、再度質問です。令和2年次の約1,900人の差が、後に4,000から4,800人に開く要因は何なのか。町の推計は、住宅開発による人口増を想定していますが、その数は多くとも3,500人です。この数には、令和2年次の1,900人も含みます。この3,500という数は、2040年次の4,000~4,800人とは差があります。この差が、マンション建設による人口増が原因で生じているのであれば、住宅開発が人口規模の維持に寄与していると言ってもよいと思います。しかし、それ以外の理由で発生しているのであれば、マンション建設による人口増は、単に人口減少が訪れる時期を先延ばししているのに過ぎません。「人口規模の維持に寄与している」という解釈は、ミスリードです。
どちらが妥当なのでしょうか。それに答えるには、両者の推計の詳細を知る必要があります。特に重要なのは、社会増減や自然増減に係る仮定です。これらが両推計で違うのか、違わないのか、伺います。
総合政策部長
コーホート要因法と言いますのは、同じ時期に出生した集団ごとに生残率、移動率、子ども女性比といった仮定値を当てはめて、将来人口を推計する方法でございます。国立社会保障・人口問題研究所における推計方法の詳細な部分までは把握できかねますが、5年ごとに実施される国勢調査結果をもとに仮定値を算出されており、本町の推計は、各年度における住民基本台帳人口の推移をもとに仮定値を算出しているところに違いがございます。
また、本町の推計で加味しております住宅開発における年齢別人口は、本町における過去の開発時における実績をもとに仮定値を算出しており、本町全体の人口比と比較いたしますと、年少、生産年齢人口の層が厚く、老年人口の層が薄くなっております。また、開発に伴う人口増加時期につきましては、推計時点で建築時期が把握できたものはその時期に、JR島本駅西地区につきましては令和5年以降の時期に増加すると仮定して算定をしております。このようなことから、両者における仮定値については相違がございます。
以上でございます。
中田議員
両者の推計の過程には違いがあるけれども、その詳細は把握していないとのこと。であれば、この2つの予測の違いを根拠に、現在の住宅開発が将来的な人口規模の維持に寄与すると主張することはできないのではないでしょうか。もちろん、住宅開発が人口規模の維持に寄与する可能性も否定されたわけではありません。この件、さらに深く検討する必要があり、今後、改めて取り組みたいと思います。
その点で、1つ、指摘したいことがあります。2040年時点で人口が3万人だからといって、将来的に人口規模の維持につながるとは言えないということです。ある時点で、人口の絶対数が多かったとしても、同時に減少率が大きければ意味がないからです。長期的に見て重要なのは、減少率をいかに小さくするかです。私が問うたのは、将来的な人口規模の維持であって、2040年時点での人口3万人として論じるのは、論点がずれているのではないかと思います。
さて、次に「高層マンション建設によるデメリットについて」です。これについては、「景観に与える影響」と「インフラ整備が追いつかない」の2点を挙げていただきました。今回は、景観に与える影響について伺っていきます。
その影響は長期的、例えば40年後にはどう出てくるでしょうか。40年後の町を想像してください。新しくできたマンションでさえ、築40年です。既存の大型マンションはほかにもありますし、それに加え、市街地のほとんどに高さ規制がない島本ですから、今後も駅前や住宅地を問わず、高層マンションが建つ可能性は否定できません。
40年後に、老朽化したマンションが大量にあるまちに、人が住みたいと思うでしょうか。町長に伺います。
山田町長
分譲マンションにおいては、一般的に各管理組合により、長期修繕計画に基づく定期的なメンテナンスが行われており、長期にわたって良好な居住環境の維持に努められているところでございます。仮に、こうした適切な管理を行わないままに放置された場合には、30年で老朽化が著しく進行するといったことも想定されるのかもしれませんけれども、近年では、建築後一定年数を経過した集合住宅にリノベーションを施すなどにより、再度、若い世代が入居して、世代交代が進行するという事例もございます。
このため、30年後の本町が、議員御心配のような、住みたいと思う人がいないようなまちになっているというイメージは持っておりませんが、本町が将来にわたっても住みたいまち、住み続けたいまちとなるよう、本町の個性や魅力を一層伸張させるため、島本町景観計画を策定し、本町の魅力向上に資する景観を見いだした上で、まちの付加価値を高めるよう努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
中田議員
40年後に、老朽化したマンションが大量にあるまちに、人が住みたいと思うかどうかについて、見解をお尋ねしたのですが、住みたい町になるよう努めますとのお答えで、答弁が噛み合っておらず、非常に残念です。
また、景観については、これから魅力向上に資するものを見いだすということでした。つまりは、町はどのような景観がまちの魅力につながるのか、まだ分かっていないということでしょうか。その状態で、高層マンションが景観に与える影響がまちの魅力を損なうのではないかという懸念に対し、景観計画の策定で対応していくという答弁をされるのでしょうか。このような答弁は、まちの魅力につながる景観が損なわれる可能性を、景観計画の策定で防ぐ見通しのもとではじめて成り立つのではないでしょうか。
話を戻します。40年後の島本町を想像するにあたって、現状、既存の大規模集合住宅に何人くらい収容できると思われるのか、お尋ねします。
総合政策部長
既存のマンション、「大規模集合住宅に何人ぐらい収容できるのか」でございますが、マンションの規模の大小は法律などで明確に定義はされておりません。一般的には、総戸数が100戸以上の集合住宅を大規模マンションとするものが多いようですが、不動産業界の中でも基準は様々であることから、何人ぐらいが収容できるかについての正確なお答えは困難でございます。
なお、民間の調査におきましては、本町の分譲マンションの戸数は、令和2年時点で約5,700戸というデータが公表されております。
以上でございます。
中田議員
民間の調査結果をお答えいただきました。その調査では、全国主要行政区市町村で、分譲マンション戸数を全住宅戸数で割ったマンション化率に順位をつけて、上位30位までを公表しています。そのほとんどは政令指定都市の行政区で占められていますが、その中で島本町は22位に入っています。マンション化率約42%です。本町は郊外に位置するにも関わらず、大都会並みのマンション化率ということです。極めて異例な状況にあると言えるでしょう。
また、この調査では、築30年を超えるマンションの全体に占める比率も示されています。公表された30の行政区、自治体の中で、最も高い55%という値を示しているのが島本町です。50%を超えるところはほかにありません。このことについて認識はありましたか。また、このことを課題と捉えていますか。
総合政策部長
先ほど御答弁申し上げました民間調査では、本町における築30年を超える分譲マンションの戸数は、令和2年時点で約3,160戸と公表されております。本町には、若山台や水無瀬地域、山崎地域などに、昭和末期以降に建設された集合住宅がございます。これらの住宅や、そこにお住まいの皆様は、今日に至るまで本町の発展及び地域の振興に大いに寄与してこられました。築年数は徐々に経過してまいりますが、各管理組合の皆様により、適切に維持管理がなされていることに敬意を表するところであり、問題視すべき現状にあるとの認識は持っておりません。
とは言え、建物である以上、将来のいずれかの段階では、建て替え等も含めた検討が行われる時期が到来することも認識はいたしております。
以上でございます。
中田議員
私は、これらのマンションの現在の管理状態を尋ねたわけではありません。築30年越えのマンションは、御答弁のように早晩建て替えが必要になってきます。そのようなマンションが多くある現状を、行政として課題と捉えているかどうかという意図でお尋ねしました。それに対し、なぜ集合住宅の管理組合の皆様に敬意を表するというような御答弁が出てくるのでしょうか。
話はそれましたが、先ほど、人が住みたくないようなまちにはなっていない、ゴーストタウンのようなまちにはなっていない、イメージはないというようなことを言われましたが、少なくとも、30年越えのマンションの割合が高いということは、40年後の島本町を想像する上で重要なポイントです。
もう1点、伺います。全国的に住宅が過剰であることが社会問題となっていますが、島本の現状はどうか、対処すべき課題だと考えているのか、町長に伺います。
山田町長
現状におきましては、本町の住宅がそこまで過剰との認識は持っておりませんけれども、全国的に適正な管理が行われていない空き家が地域住民の生活環境に影響を及ぼしているという課題もあり、有用な地域資源として利活用するなどの取組も必要ではあると考えております。
以上でございます。
東田議長
残り時間、もう少ないので気をつけてください。
中田議員
過剰との認識は持っていないということは、住宅の数は適正であるということでしょうか、伺います。
山田町長
先ほどの御質問は、「住宅が過剰であって、本町として対処すべき問題であるか」というお尋ねでしたので、現状のところ、そこまでの認識は持っていないという趣旨でお答えをさせていただいたものでございます。
交通利便性の高さなどを背景に、本町における住宅需要は比較的高い水準にあるものと思われますが、どのような指標をもって地域における住宅戸数を過剰とするかについて、確立された考え方はないのではないかと考えております。
以上でございます。
中田議員
住宅が過剰かどうかは自分たちでは判断できないということでしょうか。しかし、統計によると、ここ10年の島本町は世帯数より住宅数が上回っており、2013年は240戸、2018年は490戸、住宅数が超過しています。また、島本町空家等対策計画では、本町には1,000件以上の空き家、空き室があるとも見積もられています。そのうち880件は住み手が見つからないまま放置されてしまう可能性が高いものです。また、島本駅西側に1,000人が住むことができる大型マンションが供給されると、そのうち3割の約300人が町内移動することも見積もられています。これは現状に加えて、さらに100戸弱の空き家が発生することを意味します。利活用だけで対応できる数ではないと感じます。
ある研究者によると、住宅過剰社会とは、世帯数を大幅に超えた住宅が既にあり、空き家が右肩上がりに増えているにも関わらず、将来世代への深刻な影響を見過ごし、居住地を焼き畑的に拡げながら、住宅を大量に造り続ける社会のことを言うそうです。まるで、本町のことを言っているように見えます。
質問です。将来のまちの価値を維持するために、住宅抑制策にもなる高さ規制をかけるべきではないでしょうか。町内で高さ制限がない区域は、建ぺい率、容積率、斜線制限、日影規制があればの範囲内で、どんな高さの建物も建てられます。それは、まちの魅力を損なうことになるのではないでしょうか。そういう危機感があるのかないのか、町長に問います。
山田町長
まちの魅力に係る御質問でございます。
まちの魅力につきましては、住民の皆様には住みたいまち、住み続けたいまちと御認識をいただくための要素と考えており、景観形成につきましても、1つの重要な要素であると考えております。しかしながら、景観につきましては、色彩や形状など、様々な観点での捉え方ができることから、現在、島本町景観計画の策定にあたり、本町の魅力向上に資する景観とはどのようなものなのかなど、住民の皆様からの意向調査等踏まえ、検討しているところでございます。今後につきましては、島本町景観計画策定委員会における御議論を踏まえ、計画を策定してまいりたいと考えております。
なお、建築物等の形態、意匠や高さの基準につきましては、土地所有者の私有権の制限等につながる可能性があることから、本町の魅力向上に資する景観についての十分な議論や地域特性、住民意向などを踏まえた上で、慎重に検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。
中田議員
建築物等の高さ基準については慎重に検討していくということでしたが、私が言いたかったのは、高さ規制がないことが、まちの魅力を損なっているという危機感はないのかというものです。町長に、再度伺います。
山田町長
本町では、市街地の様々な場所から山並みを望むことができ、特に水無瀬川沿いでは、周辺の住宅や山並みが一体となり、自然の豊かさを身近に感じることができるなど、本町の景観上の魅力になっていると考えております。
私といたしましては、現状も町域内の一部には用途地域などに基づく高さ制限があるものの、このまま将来にわたり、市街地内の大部分で高さ規制がなく、あらゆる場所に高層マンションが建ち並ぶようなことになれば、自然と調和した本町の景観上の魅力が失われてしまうのではないかとの懸念を持っております。
現在、都市計画マスタープランの改定を進めており、改定後のプランでは、景観形成の方針の一つといたしまして、山並み景観を本町のシンボルとして保全し、調和に配慮した景観形成を目指すとともに、地域ごとの良好な景観形成のために、建築物等の高さ規制について検討することを予定をしております。
以上でございます。
中田議員
町長としても危機感を持っておられるということが分かりました。また、都市計画マスタープラン改定では、地域ごとの高さ規制の検討を予定しているということです。であれば、できるだけ急いでいただきたいです。現在ですら、私のもとには不安を抱えた住民の皆さんから声が届いています。緊急を要します。
まとめです。確かに、高層マンションが建てば一時的に人口が増えます。しかし、景観や既存住宅、住民への悪影響などによって、まちの魅力が損なわれるのであれば、それが逆に人口減少に拍車をかけることになりかねません。また、マンション化率の高さや30年越えのマンションの割合の高さという本町の特異性は、進みつつある住宅過剰から生じる課題を増幅する要素として働きます。2040年を超えた、もっと先の期間を見据え、その間の社会減を少しでも和らげるためには、高層マンション等の住宅開発に頼った人口増ではなく、既存の住宅の新陳代謝を進めることで、良好な住環境の整備やまちの魅力を高め、住民の生活の質をよいものにすることが……(質問時間終了のベル音)……大事なのではないでしょうか。
以上です。