2022/2 ホタルが舞い飛ぶ水無瀬川をいつまでも
- みどり 中田
- 2022年2月28日
- 読了時間: 24分
中田議員
2022年2月定例会議一般質問、「ホタルが舞い飛ぶ水無瀬川をいつまでも」を行います。
水無瀬川沿いの街路灯が2021年6月にLED化されました。ここに至るまで2回の一般質問で、LEDライトの色及び生息地である川面を光で照らさないような配慮を求めてきました。
色については、一定配慮があったように見えますが、川面を光で照らさないように求めた件については、配慮されたどころか、LED化後、川の中の明るさが激増し、ホタルの生息環境は明らかに悪化しています。LED化におけるゲンジボタルへの配慮の現状と課題、今後の対応や、生物多様性保全創出の現状について伺います。
「水無瀬川沿いのLED化におけるゲンジボタルの光害対策と課題」について、伺います。
都市創造部長
それでは、中田議員の一般質問に、順次御答弁申し上げます。
まず、1点目「ホタルが舞い飛ぶ水無瀬川をいつまでも」のうち、「水無瀬川沿いLED化におけるゲンジボタルの光害対策の現状と課題について」でございます。
水無瀬川沿いの街路灯のLED化につきましては、コスト縮減の観点から、新たに照明柱の設置は行わず、既存の照明柱を利用し、灯具及び安定器の交換を前提に検討を行いました。そのため、これまでと同様に、照明があたる範囲といたしましては河川内へも照射されておりますが、主としては、堤防道路の照度を確保することを前提に設計いたしております。また、灯具につきましても、既製品の中からホタルをイメージした形状を踏襲したものを選定し、必要となる路面照度を確保しつつ、ホタルに配慮した暖色系の照明色で設計いたしました。
今回、一定の配慮を行いましたが、現在の設備の構造上の制限があったことから、ホタルの生息環境にとっては理想的な環境となっていないことが、現時点における課題であるものと認識いたしております。
以上でございます。
中田議員
LED化後、「ホタルの生息環境にとっては、理想的な環境になっていないことが課題である」ということを認識しているということでしたが、単に「理想的ではない」というだけではなく、LED化以前よりも生息環境として「悪化」しているということを強調するとともに、行政には、しっかり認識していただきたいと思います。
さて、「現在の設備の構造上の制限」があったということですが、既存の照明柱を利用した上でも、ホタルをイメージした形状以外であれば選択肢があったように聞こえます。確認します。
都市創造部長
灯具につきましては、様々な製品がございますが、当該路線につきましては、過去からホタルをイメージした灯具が設置されておりましたことから、既製品の中から、イメージが類似する灯具を選定いたしております。
以上でございます。
中田議員
ほかに選択肢はあったということですね。
ということは、ホタルにとって重要な生息環境を維持することよりも、人間が照明を見たときに、「ああ、ホタルのような形だなぁ」というイメージを抱くことを優先させたということでしょうか。もし、そうだとするなら、根本的なところで目的を見失っているように思われます。
生物多様性を保全したり、自然環境を健全な状態に維持することが重要なのは、私たち人間にとって必要だからなのですが、そのためには、生物側の立場からの視点が必要不可欠です。そのような視点を欠いた人間側のイメージは、しばしば独りよがりなものになってしまうことを指摘しておきたいと思います。
それはさておき、変更前の街路灯では、強い光は直下の路面に向いて放たれており、川面方向にはシェードによって光が弱められていました。このことにより、道路面の明るさは確保しつつ、河川内は暗い状態が両立していました。ここ数年は、名神高速より下流の地域でもホタルが数多く見られるようになっており、LED化される前の状態の街路灯であれば、環境としては最良のホタルが乱舞するような理想的なものではなかったとしても、ホタルにとって、それなりに許容可能なものであったことが推察されます。ですから、LED化の際には、このような条件を維持することが最低限必要だったはずで、私も以前、そのように求めていました。
ところが、皆さんは変更後の灯具の形状を御覧になったでしょうか。灯具内のLED電球は360度全方向に光を放っており、川面と逆方向に放たれた光は、灯具内のシルバーメタリックの内張によって、川面方向に強く反射する構造になっています。つまり、この灯具は、下方向ではなく水平方向、つまり川面の方向を強く照らすようなものとして、わざわざ作られているように思えます。このような灯具は、例えば、グラウンドの夜間照明として使われるのであれば、効率的なものなのでしょう。
しかし、ゲンジボタルの個体数が回復傾向にあると思われる水無瀬川の街路灯としては不適切だと言わざるを得ません。これこそが、私が懸念していた事態です。不適切な灯具が設置されたことにより、倒錯した事態が生じているのではないかと懸念しています。先ほどの答弁で、「主としては堤防道路の照度を確保することを前提に設計した」ということですが、実際にはどうなっているのでしょうか。
また、目で見る限り、河川内の明るさが激増しています。改めて、「LED化後の路面と川の中の照度」について、その数値を伺います。
都市創造部長
次に、「LED化後の路面と川の中の照度について」でございます。
LED化後の堤防道路の路面照度につきましては、国土交通省の歩行者に対する道路照明基準に基づき、住宅地区における交通量の少ない道路として定められた3ルクス以上を確保しております。また、河川内の照度につきましては、ホタルが成虫となって生息することが想定される堆積土砂の天端やホタルの幼虫が上陸すると想定される堆積土砂ののり面で測定しており、現在の照度は、0.1ルクスから4.6ルクスとなっております。
以上でございます。
中田議員
今の答弁について、より詳細に見ていきたいと思います。
情報公開請求により、業者が測定した「街路灯LED化後のゲンジボタルへの影響と対策」と題された検討資料を見させていただきました。今、お答えいただいた値が載っている資料です。それによると、路面照度は6か所で測定されています。確かに、この6か所を平均すると、当該箇所の路面照度基準である3ルクスを上回っています。ですが、値を個々に見てみると、6か所中3か所で、路面照度基準を下回っています。計測箇所の半分で、照度基準を下回っているのです。具体的には、照度基準を上回る場所は21ルクス、6ルクス、4ルクスですが、下回る箇所は1.8、1.2、1.6ルクスです。つまり、路面照度にかなりばらつきがあります。
一方、河川内の照度についてです。こちらは0.1~4.6ルクスと言われましたが、これも詳細に見てみると、計測箇所の中には、草や土手の陰で街路灯の光が直接当たらないところが幾つもあります。その箇所を除いた9か所のうち、路面照度基準を上回る3ルクス以上あった箇所が8か所です。つまり、ホタルの生息環境を維持すべき河川内のほうが、路面よりも安定的に路面照度基準を満たしている、明るくなってしまっているのです。これは倒錯だと言わざるを得ません。端的に言って設計ミスなのではないでしょうか。
付け加えますが、河川内で陰になっている6か所は、照度が0.1~0.3ルクスでした。ホタルの幼虫が上陸してさなぎになるためには暗い場所が必要で、この0.1~0.3ルクス程度であれば、上陸はできるかも知れません。しかし、それでよかったというわけではありませんか。川面の中で、陰になっていない場所の照度が3ルクスほどあるということを考えると、全体で見て、幼虫の上陸場所が半減以下になっている可能性があります。
加えて、成虫になったホタルは河川内全体を飛び回るのですから、以前のように、河川内をホタルが飛び交うようにするには、河川内全体の照度をせめて以前並みに落とす必要があります。ですから、以前の一般質問で、川面を光で照らさない配慮を求めたわけですが、その際、LED照明を設置の際には「道路区域内の照度を確保しつつ、可能な限りホタルにも配慮した仕様についても検討してまいりたい」と答弁されています。にもかかわらず、実際に設置されたのは、わざわざ川の方向を照らす灯具でした。
なぜ、このようなことになったのか、理解に苦しみます。「この実施設計でよいと判断した根拠」は何でしょうか。
都市創造部長
次に、川の方向を照らすような照明について、「この実施設計でよいと判断した根拠について」でございます。
当該実施設計業務における判断といたしましては、先ほども御答弁申し上げましたとおり、既設の照明柱を活用し、LED化工事を実施いたしております。このことを踏まえ、当該路線におけるLED化の整備については、国土交通省の道路照明施設設置基準に基づき進めており、主たる目的といたしましては、通行される方々が安全に通行していただけるよう、LED化工事を実施するものでございます。
さらに、当該路線は水無瀬川にも隣接しており、本町といたしましても、生物多様性の観点からホタルへの配慮も必要であると考えておりますことから、可能な限り、配慮に向けた対策を実施いたしました。
なお、御指摘の街路灯の向きにつきましては、わざわざ川の方向を照らすように設置したという意図があったものではなく、整備前に設置しておりましたナトリウム灯と同様に、ホタルをイメージした形状を採用した上で、堤防道路側を通行される方が従前どおり安全に通行していただけるよう照度基準を配慮した設計に加え、LED灯の照明色をホタルが好む暖色系の照明色を採用し、実施いたしたものでございます。
以上でございます。
中田議員
わざわざ川の方向を照らすように設置したという意図があったものではないということは当たり前です。そんな悪意があるはずがありません。にもかかわらず、このような仕様になってしまったのはなぜか、ということを聞いています。
川面を光で照らさないように求めたときには、既に実施設計は終わっていましたが、そうであっても、川面を光で照らさない配慮を求めた際に、「LED照明を設置の際には、道路区域内の照度を確保しつつ、可能な限りホタルにも配慮した仕様について検討してまいりたい」と答えておられます。実施設計を再度確認して、川面を光で照らしていないかどうか、確認すべきだったはずです。
確認はされたのでしょうか。実際に街路灯が交換されまで1年ありました。確認の時間は十分にあったはずです。伺います。
都市創造部長
「川面を光で照らしているか」の確認につきましては、先ほども御答弁申し上げましたとおり、既設の照明柱を活用し、LED化工事を実施いたしておりますことから、堤防道路に設置されております既設の照明柱の位置や高さから、川面に光を完全に遮ることは困難であるものと認識いたしております。しかしながら、設計業務におきましては、道路区域内の照度を確保しつつ、ホタルが好む暖色系の照明色などを検討し、可能な限りホタルへの配慮を行った上で、工事を実施いたしております。
以上でございます。
中田議員
川面に行く光を完全に遮断すべきとは言っていません。質問の趣旨を曲げて答弁されないように希望します。
繰り返しますが、以前も街路灯はあり、川面にも光は入っていたものの、ここまで明るくはなっておらず、ホタルの数も回復傾向にありました。この流れをLED化によって反転させないよう、わざわざ変更前に配慮を求めたのです。
しかし、現実はどうでしょうか。少なくとも、川面はかなり明るくなってしまっています。この事態は避けられたはずです。2020年6月の一般質問で川面に光が行かないよう求めた際、「検討してまいりたい」と答えています。
先ほどのお答えでは、川面を光で照らしていないかどうか、確認したかどうかが分かりませんでした。再度、お尋ねします。「川面に向く光」という観点から、実施設計を再度確認したのですか、していないのですか。
都市創造部長
LED灯は、ナトリウム灯に比べ照射範囲が狭いという特徴があることから、まずは、道路区域内の照度基準を確保できるLED灯ランプを選定した上で、製品の構造上、川面にも光が一定向くことが想定される中で、ホタルへの配慮として、設計上、これまでのナトリウム灯よりも、ランクを落とした明るさで設定いたしております。また、ホタルへの影響が少ない暖色系の照明を採用することにより、再度確認し、可能な限りホタルに配慮していると判断した上で、工事を実施いたしております。
以上でございます。
中田議員
今の答えだと再度確認したのは色についてであって、川面に向く光について、再度検討したかどうかというところは分からずじまいです。これはしてなかったのかなと思います。わざわざ指摘したことが、生かされずに、このようなことになってしまったことは大変残念なことだと思います。
次の質問です。
「照明の色」についてです。ホタルに配慮した暖色系の照明色とのこと。色に配慮したということですが、波長は確認したのでしょうか。
都市創造部長
照明色がホタルの生息環境に多大な影響を及ぼすものと認識いたしていることから、生物多様性保全創出の観点から、暖色系の照明色を採用することにより、ホタルへの配慮を行ったところでございます。
なお、設計業務の中では、LED灯の照明色により、おおよその波長を把握の上、対応いたしましたが、採用した照明色の具体的な波長の内容に関する確認はいたしておりません。
以上でございます。
中田議員
色が違うことで波長が違うだろうと見込んでいたが、実際に、その製品自体の波長は確認されなかったということかと思います。
以前、一般質問でも紹介した、黄色であれば、赤色であれば、影響が少ないというものについては、LEDが純粋にその色である場合のことです。単色LEDの場合、色によって特定の波長の光だけが放たれ、それ以外の波長の光がほとんど出てこないので、昆虫が視認しにくい色を選べば影響は抑えられます。つまり、色に配慮するというのは、どのような波長の光が放たれるかを検討するということです。
さて、今回、暖色系照明色にしてくださったということですが、暖色系LEDについて、他社の製品ですが、波長について情報がありました。見てみると、その製品は、オレンジ色とは言いつつ、黄色以外の白や青の波長の光も一定含んでいるようです。今回の街路灯で使われている暖色系LEDも同じであれば、例えばホタルの幼虫にとって、黄色であれば何ルクスだったら大丈夫という研究成果があったとしても、その結果を単純には適用できないということになります。この点、今後のホタル配慮において、注意していただきたいと思います。
また、幼虫にとって黄色LEDの影響が比較的小さいという報告がある一方で、成虫は、繁殖の際に雌雄のコミュニケーションのため光を使う場合には、似た色の黄色の照明は悪影響を及ぼすという報告もあります。また、青色が含まれていると、かなり低い照度でも影響があるなど、生き物の生態は複雑ですので、検討の際には慎重に行うことが必要です。
質問です。
「ゲンジボタルへの光害解消のための今後の手立て、予定」について、伺います。
都市創造部長
次に、「ゲンジボタルへの光害解消のための今後の手立て、予定」についてでございます。
ゲンジボタルに対する今後の対策につきましては、当該LED化工事以前と同様に、既に道路の照度基準を踏まえた上で、灯具の間引きを行っておりますが、さらに、照度の確認を行った上で、他の効果的な手法についても検討を進めております。
具体的には、現在、設置いたしております照明灯具に対し、カバーやシールなどの照度を落とす工夫や水無瀬川の川面への照明を遮断する遮光版を設置するなど、国土交通省の照度基準を確保しつつ、コスト面も考慮しながら、河川内の照度を落とせる手法について、検討を進めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
中田議員
間引き以外の効果的な手法の検討を進めるとのことですが、それはいつまでに対応されるのでしょうか。また、灯具の間引きをしたとのことですが、前後で照度の確認、その効果を確認されていますか。これに限らず、対応するのであれば、その効果を計るために、河川内の照度を前後で確認すべきです。
また、左岸だけでなく右岸――こちら側も相当明るいです。こちらの対応も検討すべきと考えますが、いかがですか。
都市創造部長
現在、名神高速道路と東大寺公園内のテニスコートとの間に設置されておりますLED照明について、灯具の間引きを行い、堤防道路と河川内の照度を確認いたしました。河川内の照度につきましては、土砂が堆積している天端におきまして、間引く前は4ルクスを超えた照度を複数箇所で計測いたしておりましたが、間引いた後では、当該箇所において4ルクスを超えた照度は1か所であるものの、おおむね2~3ルクスとなっております。
なお、堤防道路の路面照度は、歩行者に対する道路照明基準を満たしておりますことから、通行される方々への影響は少なくしながら照明を間引くことで、現在の設備において、100%のホタルへの配慮対策は困難ではございますが、一定の効果はあるものと認識いたしております。しかしながら、今後におきましても、さらなる効果的な対策を、コスト面も考慮しながら検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。
中田議員
「さらなる効果的な対策」は、進めていただきたいと思います。
一方、先ほどから「コスト面を考慮」と言われますが、今回のLED化におけるホタルへの光害については、懸念事項を事前に指摘していたにもかかわらず対応がされていないことから、行政の対応が適切ではなかったことに起因していると思います。
ですから、予算がかかるからできないというようなことを言える立場ではないと思います。コストを理由に中途半端なことをするのではなく、行政の責任で適正な状態になるよう、せめて以前と同じように路面を照らしつつ川面が暗くなるよう、最優先で取り組んでください。
また、繰り返しますが、街路灯が道路を照らすために設置されていることは承知しております。全く川面を照らさないようにという100%のホタルへの配慮を求めているわけではありません。せめて、以前と同じレベルにまで戻していただきたいのです。
また、「さらなる効果的な対策を検討」とのことですが、右岸の対応も検討すべきです。街路灯変更前の昨年は、右岸の堤防を越えて、住宅の中の田んぼや畑にもホタルが飛んで来ていることを確認しています。現状の明るさは、それを妨げることになると思います。
こんなに自然環境の豊かさが身近に感じられること、ほかのまちにはない、このまちの強みです。これは単にホタルの保全だけの話ではありません。島本のまちとしての魅力を高めるために、大変重要なことです。この点、心して対応していただきたいです。
1点、今回、LED化した中で、指手橋の部分だけは、先ほど来、灯具の構造が問題になっている箇所とは違って、光の向きが完全に制御されています。ホタルへの光害対策としては完璧です。その点は評価しています。街路灯LED化後も、二中や指手橋付近については、ゲンジボタルの生息への影響は小さいだろうと思われます。しかし、それ以外の街路灯LED化区間の水無瀬川は、ホタルの生息には致命的な明るさになっています。今後のさらなる改善を求めます。
次です。
「光害対策以外のホタルの生息環境保全について」です。
2020年6月の一般質問では、水無瀬川のしゅんせつや護岸工事、川への生コン残渣の流入等など、生息環境に影響を与える懸念事項に対し、全庁的な保全に向けた対応の必要性を訴えました。答弁では、「可能な限りの配慮を呼びかける」と前向きでしたが、その後の取組状況を伺います。
都市創造部長
次に、「光害対策以外のホタルの生息環境保全について、2020年6月の一般質問以降の取組状況について」でございます。
水無瀬川のしゅんせつや護岸工事につきましては、河川管理者である大阪府により、今年度から来年度にかけて実施を予定されております。大阪府が実施する事業ではございますが、水無瀬川に生息するホタルへの配慮といたしましては本町も重要であると考えておりましたことから、過去から大阪府への要望を行っておりました。今回の工事に先立ち、本町も同行のうえ、大阪府に水無瀬川の現地確認を行っていただいております。
大阪府の見解といたしましては、可能な範囲において、学識経験者への相談など、ホタルへの配慮を対応する旨の回答を頂いております。具体的には、大阪府からホタルに精通した学識経験者へ相談していただき、現在の水無瀬川の状況をはじめ、ホタルの幼虫の生息場所を確認の上、しゅんせつ工事や護岸工事を行う際の施工範囲や詳細な施工方法などについて、様々な視点から御教授いただき進めていただけるよう、調整をしていただいております。
以上でございます。
中田議員
水無瀬川しゅんせつにおける大阪府のホタル配慮では、専門家からの提案を受け、大変丁寧に対応していただいている様子が分かりました。
まだ工事の最中なので、なんとも言えないところはありますが、本件から思うのは、府に前向きに対応していただいたことに加え、事前の関係者との丁寧な打ち合わせや情報共有、そして配慮を行う際の、適切な専門家につないでいただくことの重要性です。この件は、町にも模範例としていただきたいと思います。
次です。
「生物多様性保全創出ガイドラインの活用状況」について、伺います。
水無瀬川のホタル以外にも、行政としては、生物多様性に配慮した働きかけや取組が複数行われていると思います。「その内容と今後の課題」について伺います。
都市創造部長
次に、「生物多様性保全創出ガイドラインの活用状況」について、「その内容と今後の課題」についてでございます。
生物多様性保全創出ガイドラインにつきましては、令和元年度の策定以降、各課で取組が進められております。これまでの主な取組内容といたしましては、令和2年度において、開発に伴い撤去される水路に生息している生物等の保護や生産緑地地区の追加指定などを行ったところでございます。
今後におきましては、環境課から各課への生物多様性に関する情報提供を継続して行うとともに、各課の取組に関する情報を共有することで、より多くの業務で生物多様性に配慮した取組が進められるよう努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
中田議員
今、令和2年度の実績をお答えいただきましたが、令和3年度も前向きに対応していただいていることは実感しております。ガイドライン策定以降、様々に前向きに取組が行われていることはよいことだと思います。引き続き、取り組んでください。
これについて、これまでの開発等による生息環境へのダメージを軽減するといった「保全」から一歩踏み出して、生物多様性の「再生」や「創出」についても検討していってはどうかと思いますが、いかがですか。
都市創造部長
次に、「生物多様性の『保全』から、『再生』『創出』についても検討してはどうか」についてでございます。
本ガイドラインにつきましては、生物多様性の「保全」だけでなく、「創出」についても配慮することとしているものでございます。
具体的な事例としては、JR島本駅西地区における新たな公園の整備にあたり、生物多様性に配慮した様々な樹種による植樹を行い、多様性を「創出」することを、町と協議の上、進めておられるところです。また、山林においては、台風被害や火災等により喪失した森林の「再生」が必要と考えております。
なお、開発地を自然の状態に戻すような環境への「再生」や「創出」を行うことは、生物多様性に大いに寄与するものの、実現にあたっては様々な課題が伴うものと考えますが、引き続き関係各課と情報共有しながら、ガイドラインに即して、可能な範囲で取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
中田議員
今、具体的な事例として、駅西の新たな公園整備で多様な樹種を植えることを挙げていただきましたが、残念ながら、それは単なる植樹であって、生物多様性の創出とは程遠いものです。
生物多様性の創出のためには、その地域の中で、多種多様な生き物が自立して生活感を全うし個体数が維持できるような環境、すなわち生息地を造ることが必要です。ここには10本、10種の木を植えましたというものではありません。
もし、その新たにできる公園で生物多様性を創出するというのであれば、例えば、全ての面積をこんもりとした樹林地にし、人の出入りと言えば中に1本の道を通すだけぐらいのことをすべきです。そうすれば背後の山、山地と緑の回廊を形成することで、タヌキ、アナグマといったほ乳類にとっての生息環境を増やすことが期待できます。湿地を造るのもよいかも知れません。そのぐらいしてはじめて、多様な生物が生息する環境が創出できるのです。
さて、生物多様性創出の実現にあたって、今、御答弁で「様々な課題がある」と言われましたが、その課題は具体的に何でしょうか。
都市創造部長
開発地を自然の状態に戻すような環境への「再生」や「創出」を行う場合の課題といたしましては、大きくは土地所有者等の同意と費用負担に関することが挙げられます。特に、自然環境の再生にあたっては、民有地の場合、私有財産の利用に制限が生じること、また、「再生」に要する費用やその後の維持管理費用が生じることが考えられます。
以上でございます。
中田議員
では、課題は主に「土地所有者等の同意と費用負担」とのことですが、生物多様性創出に関するその課題は、どのように克服していくのでしょうか、伺います。
都市創造部長
生物多様性創出に対する課題につきましては、先ほど御答弁いたしましたとおり、土地所有者等の同意や費用負担の問題といった、容易に解決できない事項が多くございます。町といたしましては、社会経済活動が円滑に継続されることを前提に、生物多様性保全創出ガイドラインに即し、できる限り、生物多様性の創出に配慮した取組を行ってまいりたいと考えております。
以上でございます。
中田議員
今の御答弁では、社会経済活動が優先で、生物多様性保全はその次であるかのように聞こえますが、もう、それでやっていける時代ではありません。SDGsを挙げるまでもなく、このことは既に世界的な共通認識になっています。社会経済活動と生物多様性保全は両立させなければならないもので、どちらかが優先されるべきものではないのです。
では、どうするか。その鍵は、自然環境や生物多様性は、誰かが私有すべきものではなく、地域に住む人間全員にとっての共有財産であるという認識にあります。先ほど、土地所有者等の同意が課題であるとの御答弁でしたが、であれば、行政がなすべきことは、その方たちの理解を得られるような啓発活動です。
2019年に生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォームが公表した生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書では、生物多様性が、人類史上これまでにない速度で減少しており、自然の寄与である生態系サービスが破壊的に劣化していること、それらの変化要因が過去50年で増大していることを指摘しています。その上で、生物多様性の損失を低減し、回復させるためには、経済、社会、政治、科学技術における横断的な社会変革により、生物多様性の損失の根本的な要因である社会経済活動による影響を低減させることが必要であるとしています。
環境省は、これに関して、「よい暮らしについての多様な観念の需要」を効果的な手法の1つとして挙げています。これは、物質的な消費や経済的な豊かさに根ざした幸福感だけでなく、人間関係の質や自然との調和といった「豊かな暮らしの多様な在り方」を尊重するものと説明されています。私なりに言い換えると、物もそんなに買わなくてよいし、お金持ちにならなくてもよい、歩いて行ける範囲に農地が広がっている町に住んでいることが幸せなんだというようことだと思います。このように考える人は、まだ多数派ではないかも知れません。しかし、環境省が言うのは、このような考え方を排除すべきではないということなのです。
大事なことなので、もう一度述べます。社会経済活動が円滑に継続されることを前提にしていては、この問題は乗り越えられません。もちろん、人の生命や安全が脅かされてはいけませんが、社会経済活動の円滑化が多少低減したとしても、その不便さがわずかなのであれば、自然や生物多様性のために少し譲るという考え方に進んでいかなければならないのです。
自然というのは、決して我々にとって都合のよいものばかりではありません。我々にとって都合が悪い、ちょっと困ったようなことを引き起こすこともあります。しかし、人の生命や安全が脅かされるほどではないのであれば……。
東田議長
もう時間少ないんで、質問してください。
中田議員
そのような困ったことを受け入れることが、自然再生をする上で避けては通れません。虫が飛んできたり、草がボウボウになっているぐらいのことは許容すべきですし、草がボウボウに生えていると飛んでくる虫は、鳥やほ乳類を支えてくれる存在なのですから、むしろ大事にすべきなのです。つまり、ちょっと困ったことや不便を許容することは、長期的に見れば私たち自身のためにもなります。
町も積極的にそういった価値観を発信していくべきだと考えます。最後に、町長にお考えを伺います。
山田町長
確かにおっしゃるとおり、社会経済活動と生物多様性、そのどちらを優先するということではなくて、それらを両立していくことが大切であるというふうに私も思ってはおります。
ただ、実際問題として、現実、具体的に、先ほど申し上げたように、土地を所有されておられる方の同意であったり、費用負担ということももちろんありますし、人の価値観、それこそが多様でありますので、そのことから考えますと、ただ、大きな時代の方向性といたしましては、先ほど具体例を挙げられましたように、物質的な消費や経済的な豊かさというだけではなくて、人間関係の質や自然との調和とそういったものを尊重していくという流れに向かっているのではないかなというふうには私も感じておりますし、そういった啓発活動も含めて、しっかりと住民の方ともコミュニケーションを取りながら進めていきたいというふうに考えております。
以上でございます。